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学内奨学金年次報告

 

以下,学内奨学金(山川賞)の年次報告書より一部抜粋

今年度一番後悔していることを挙げるとすれば,自分が予定していた形での情報発信を積極的にしなかったことである.
私が大学時代に成長させたい能力の一つにコミュニケーション能力の向上がある.自分自身のアイデアを文章にまとめ,わかりやすく他者に伝えることで,自分と共感できる人を探し,より考えを深めていくということである.その手段の一つとして,ブログを書くことを考え,去年のちょうどこの時期に自分のサイトを作成したのだった.だが,日々の生活で忙殺される中,なかなかゆっくりとものを考える時間が取れず,そのままほったらかしにしてしまい,結局今年度中にほとんど投稿することはできなかった.とはっても,ブログを書くことは,専門や英語の学習などに比べると緊急性も重要性も低い.正直,やらなくても全然問題はないし,専門や英語の学習の中でこの能力の向上も図れるはずである.それなのに,なぜブログでの情報発信にこれほどこだわっているのか.その理由について,少し長くなってしまうが,述べさせていただきたい.

私の趣味は読書である.今年度もたくさんの本を読んできたが,その中でも,特に自分のなかで深く考えさせられるような本と,ある日出会った.その本の一節を紹介する.

「つきつめて考えれば,いかなる行為も(道徳的に)正しくはないのだ.ノーベル賞を取ることも,宇宙飛行士になることも,地雷を撤去することも,アフリカの奥地に学校を作ることも,格別正しいことではない.それが社会的に賞賛すべきことであればあるほど,当人はほめられるに値すると信じているのだから.その意味で,傲慢を背負うのだから.(中略)すべての偉業は偶然の結果である.そのことを知っているから,成功者は必ず「運がよかったんです」と答える.それは真実であるからこそ,みな口をつぐむ.そして,真実を悟っている彼(女)の謙虚さを称賛する.その効果をうすうす知ってそう語るのだから,彼(女)はずるい.不成功者が同じことを語ったら,それは僻みであり,繰り言なのだから.」(「カイン-自分の「弱さ」に悩むきみへ-」(新潮文庫)より)

この一節を読んだとき,思わずハッとした.それは,周囲の支えに無自覚である自分の傲慢さに気づかされたから,というわけではない.そうではなく,これまで自分が考えていたものの,周囲に言えないことを著者が代わりに,はっきりと言い切っていたからだ.
自分も,昔からメディアで誰かが称賛を浴びている場面を目にすると「でも,それって本人がやりたくてやってることじゃないの?」と,心のどこかで感じていた.だが,それを実際に口にすることは,「嫌な奴」に思われそうで,なかなかできなかった.また,自分が山川賞を受賞して,今度は表彰を受ける立場になると,自分の周りにはかなわないと思うような学生が山ほどいるのを知っていたので,「いったい自分にこの賞を受賞するほどの価値はあるのだろうか,たまたま審査基準が自分のやってきたこととかみ合っただけじゃないのか…」と,よく考えていた.
だが,ある日この一節に出会ったおかげで,言いたくても言えないようなこと,自分ひとりで悩んでいることをスパッと言い当ててくれることが,どれほどの安心感をもたらすか,どれほど気持ちのいいものかを久しぶりに実感することができたのだ.それと同時に,「ブログを書くこと」を今年の目標にしていたことを思い出した.ほとんど他のだれも言わないけれど,自分はそう感じるような意見を発信することで,孤立感・疎外感をもつ同じような人に共感してほしいと思ったから,ブログを書くことを決意したのであった.
そもそも,なぜ自分は読書が好きなのかという理由を考えてみると,それは,読書は自分以外の世界について知ることができるが,それと同じくらいに自分自身についても深く知ることができるからであった.自分は高校生の時くらいから,おそらく考え方というか価値観が,ふつうの同年代の人と違うような気がしていた. 具体的には,ほかの人が気にしないようなところは変にこだわるのに,逆にみんなが気にするようなことは,大して気にならないといったようなことだ.だが,最近になってようやく気付いたのだが,一見「ふつう」に見えるような人でも,その人たちには大なり小なり,そのひとにしかない考え方や経験を有していて,それについて悩んでいる.言葉にしてみれば簡単だが,実感としてわかるのにはここまでかかってしまった.要するに,「こんなことを考えているのは世界で自分だけじゃないか」と思っても,案外同じようなことを思っている人はいるということだ.ただ,そのような意見は少数派として,圧倒的多数の意見の前に閑却される.

こういった状況の中で,自分をひとつの例として,「声の小さな人間でもこういう風にして何とか生きている」ことを,文章という形にまとめて発信できれば,自分なりに世界をより良い方向へ変えていけるのではないかと思った.そして,自分でも大きな勘違いであるとは思うのだが,このことは自分に課せられた使命のように感じた.別に何か運命的な出来事があったわけではないのだが,今まで生きてきた中で,これだけについては「自分だけにしかできないこと」のように感じていたのだった.たしかに,このようなことについて悩んでいる人へ向けたメッセージを,社会学的なデータを使ったり,自身の経験をもとにして語る本やブログはある.だが,それらは経験を積んだ大人が書いたもので会って,今現在の課題として取り組んでいる学生・青年の情報というのはなかなか見当たらなかった.だからこそ,等身大の自分を発信して,同じような境遇や考えの人に共感してほしいと思っていたのだ.そして,そう感じていたからこそ,結局何もしなかったことを今,深く後悔している.

去年は,作った当初にいくつかの記事をまとめて書いただけで,息切れしてしまった.これからは月に1,2回程度でもいいから毎月ブログに投稿していくことを目標にしたい.現在,投稿しようと思っていることについて,すこしずつ文章を書いている.具体的には,大学時代に教養を勉強する意義や,自分の人生における選択の振り返りなどである(最初は,自分にとって書きやすい題材を選んでいる).いざ考え出すと,いろんなアイデアが浮かんでくるが,まずは読み手の存在を意識しつつ,わかりやすく,質の高い文章を書くことを目標にしていきたい.

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コメント

    • 通りすがりの京都人
    • 2018年 5月 06日

    や、ほんとに文章力高いな!(笑)
    ほんでやっぱ大輔とは思考回路が合うわ(/・ω・)/
    俺も大輔に触発されてブログ再開しようと思ったけどとりあえず囲碁終わってから考えることにしたわ。
    気長にがんば~~こうやって思い出した頃にちょくちょく覗きに来ます

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