文化論

本は読むべきかー前編ー

みなさん,読書は好きですか?僕は結構好きで,1年に100冊くらいの本は読みます.正直,僕より読んでいる方というのは数えきれないほどいらっしゃると思うのですが,それでも一般的な大学生よりは読んでいるほうだと思ってます.読書というと,よく言われるのが「大学生のうちに本を読んどけ」とか「若者の活字離れ」といった言説です.
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読書と学生の関係性が論じられるときのほとんどは,こういったアドバイスや嘆きだったりするわけですよね.
学生にしても,漠然と「本は読んだほうがいいんだろうな」とは思うけど,現実的にはなかなか読めない.そんな人は結構多いと思います.そこで今回は,そもそも本は読むべきかという問題を含めて,読書について考えてみたいと思います.

読書をするメリット

そもそも「読書」が学生のうちにやっておくべきこと,として語られるということは,読書は「今はあまり気が乗らないけれど,後でやっててよかったと思える」ものであるという共通認識があるからです.「~すべき」という言葉の意味はそういうことですから.そもそも本というのは読むのに時間がかかるし,買おうと思えば結構お金もかかります.案外,手頃に始められるものでもないんですよね.
基本的に人間が何かをするときは自分の目的を達成するような行動しかしません.心身ともに回復させたいから眠るし,相手が喜んでくれることが自分の幸せにつながるから,自分のお金でプレゼントを買って,人に渡したりする.読書の場合も同じで,読んでる最中は一時的に不快だけれど,後々その苦労を上回るほどのメリットがある,と多くの人が思っている.だから,大人は若者に読書をしろというわけですね.じゃあ,そのメリットがなんなのかと聞くと,知識や視野の獲得だというのです.読書を通じて,先人の経験を追体験することで,自分の知的枠組みを拡大させる.本を通じて,他者の意見をすることで自分の意見を相対化させる.こういうことを本を読むメリットとして提示してくる.

手段としての読書と趣味としての読書

でも,これらは手段としての読書なんです.知識や視野を獲得するなら,いろんなやり方がこの世にはあるけれど,
読書という方法が,一番効率がいい.だから読書を勧めているだけなんです.
我々は「読書」と一括りにしがちですけど,こうした手段としての読書は趣味としての読書と明確に異なります.そして,「大学生が読書しなくなった.嘆かわしい」「本を読まないと社会人失格」といった主張は手段としての読書が前提にあります.人格形成や思考力の養成という目的を達成するための手段として読書があるわけですから,要するに,大人が「本を読め」ということを通じて言いたいのは「勉強しろ」「成長しろ」ということです.

これに対して,趣味というのは,それをやっている段階で目的が達成されているということを指します(やっていることが楽しくて,それで満足だということ).だから趣味に対して,メリットやコスパなんていうのは通常求めません.あくまで,知識や視野の獲得は副次的なんですね.というか,そもそも読み方を工夫しないと,一回読んだだけでは,なかなか本の内容を物にすることはできないと思います.教科書みたいに何回も読んだり,細かくメモを書き入れないと自分のものにはならないわけです.

最近,「読書が趣味です」という人で,ほとんどビジネス書や自己啓発しか読まない人がいるじゃないですか.僕は,これは厳密な意味では趣味としての読書ではないんじゃないかと思います.もし,彼らがこういった本を真面目に読んで,書かれていることを実社会で応用しているのなら,彼らは「勉強が趣味です」と言ったほうが適当でしょう.だって,彼らの主眼は読書経験そのものに置かれているわけではないのですから.そういう人が他人に「読書はいいぞ」と勧めているところを見ると,こちらとしては少し,んっ,となるんです.別に,彼らが間違っているわけでは全然ないのですが,僕の心の小ささを認識した上で言わせていただくと,ちょっと一緒にしてほしくない気持ちがあるんですね笑.

もっとも,ああいう類の本を読んで,やった気になっておわり,という人も大勢いると思います.それに関しては「読むことが目的化している」という点で読書が趣味だといえるのかもしれませんね.完全に皮肉ですが笑.

続きます

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