文化論

本は読むべきか-後編-

僕が読書を楽しむ理由

前回,話の流れでちょっと,愚痴ってしまいました.すみません.
ここでは,論を進めて,趣味としての読書の場合,どういったところが面白いのか,僕の視点で説明しようと思います.
まず一つ目に,本というのは良くも悪くも書き手の知的能力が最大限に表出されます.言ってみれば,読書とは著者との1対1の対話であり,この対話を進める中で「こいつテレビでは偉そうにしてるくせに,この程度の内容しか書かれへんのか」と思ったり「この本は凄すぎる!もっと評価されるべき」というような感想を抱いたりするわけです.編集者がいるとはいえ,他のメディアに比べれば,作り手のメッセージがダイレクトに伝わってくる.これが,知的な意味での裸を見ているようでワクワクするんです.

二つ目の理由は本を読むことで知的興奮を感じたり,好奇心が満たされるからです.新たな発見があるのはもちろんのこと,自分が知っていると思っていたものでも,理解が深まったり,思いもよらなかったこととのリンクが生まれたりする.そこに喜びを感じるんですね.
しかも,この世には到底読み切れないほどの本があり,飽きることはありません.幅広いジャンルの本があるから,自分に合った本が見つかる.「今の自分が読むべき本」というのがちゃんと存在する.
この二つ目の理由に関しては,ほとんど手段としての読書と同じです.実際,趣味として読み始めた本が手段としての本に変質することもあるし,その逆もまた,ありえるということです.ただ,やっぱりこの二つの読み方の間では,読み手の心持ちは違うと思います.

とはいえ,よくよく考えてみると,僕には読書をする明確な理由がいくつもあるわけではないようです.
それに,ぶっちゃけた話をすると,それがたとえ読書が趣味であっても,「暇さえあれば本を読む」ほどには熱中していないです,自分は.だって,そりゃYoutubeをだらだら見てるほうが楽に決まってるからです.

それでも読書を止めないのは,歯磨きと同じように,自分の中で,ある種の習慣となっているからだと思います.本を読まないまま過ごすと,なんだか気持ち悪く感じてしまう.読書は僕にとっての精神的な栄養なわけですね.「一週間で20冊」みたいに,いっぺんに大量に読むのもいいですが,それだけを続けていると,いずれ消化不良を起こしてしまう.だから「ひと月に2,3冊をまとめて読む」みたいに,1回1回はそれほどの量じゃなくても,自分が無理なく続けられるペースにすることで,「たまには読んでみるか」と思えるようになれる.そんなもんなんじゃないでしょうか.

おすすめの本の読み方

読書する時間とお金があれば,いろんなことができるので,僕は万人に向けて「読書は素晴らしい.みんな本を読むべきだ」とは言いません.それに,趣味としての読書には,向いている人と向いていない人がいると思うからです.とはいっても,個人的には読書には時間とお金をかけるに値するだけの価値はあると思います.ただ,それを具体的に示せ,と言われても,なかなか難しい.なぜなら,やっぱり読書というのは個人的な経験であり,その良さが実感できるのも「自分に合った1冊」という,それぞれの個別的経験の中でのものだからです.
つまり,必ずしもベストセラーを読んだからといって,本の良さを実感できるわけでもないんですよ.ベストセラーというのは,あくまで「売れている本」であって,そこに書かれた内容が,あなたの感性と一致するわけではない.そういう本よりもむしろ,無名の本のほうがグッとくるようなことを書いている場合が多いんです.

・・・

それでは,上で書いたことを念頭に置きながら,僕のおすすめの本の読み方を紹介します.

まずは,何でもいいから興味のありそうな本を数冊くらい借りて一回読んでみます.この時,最初の数章を読んで,全然共感できなかったり,内容がないと感じるような本は早々に読むのをやめて次に移る.ある程度なるほどな,と思える場合は全部読む.なお,ここでは深く読むことではなく,多く読むことをメインにしましょう.気になるところがあれば,軽くメモを取ったり,下線を引くくらいにしておいて,とにかく数をこなすことが大事です.これを100冊くらいやる.
そうすると,少なくとも1冊か2冊くらいは,自分にピン,とくる本があるはずです.今度はその本の著者やジャンル,参考文献を中心に,時折自分が興味のない分野の本も混ぜながら,また大量に読んでいく.
このプロセスを続けていくと,徐々に自分が必要とする本と出会ってくるはずです.そういった本をコレクションして,今度は深く読み返していけばいいんです.

これが,僕のおすすめの本の読み方,というか僕が実践している本の読み方です.自分自身の本の読み方を振り返って思ったのですが,これは人工知能が学習するシステムと似ています.(まあ,機械学習はこういったことをするために開発されたので,当たり前と言えば当たり前ですが.)ランダムにデータを読み込んで処理をし,いい反応を返してくるやつを中心に,またランダムにデータを読み込む.これを繰り返すことで,理想的な解に近づいていくのです.読書もそれと同じで,乱読することが遠回りのように思えて,その実,一番効率の良い読み方なんですよね.ぜひ,質のいい本と出合って,人生を豊かにしてください.

P.S. 今後,僕が気に入った本のレビュー記事なんかも書いていきたいと思います.

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